MSVの魂を受け継ぐ…
FULL ARMORED GUNDAM
今回は久々のAFVテイストの作例ですね。MSVという事で、気合が入りますねー。
しかも、本誌ではデビュー作の砂ガン以来の表紙!そりゃあー名誉な事です。石川さんと2ショットだし…
正しく“ツルツルざらざらブラザース”ですねえ…

折角だから、私がこの様な作風になった経緯でも…
私が小学生の頃、ガンプラブームの到来だったわけですが、元々“ロボットヒーローアニメ”ってあまり好きだった訳ではなかったんです。もちろん、当時の子供と同じ様にガンダムは見ていたのですが、元々、宇宙戦艦ヤマトや、銀河鉄道999、ルパン3世、ウルトラマンとかが好きだった為、そんなに熱心でもなかったんです。で、ガンプラが発売された頃にやっと大好きになってきて、TVもまじめに見る様になった訳です。どっちかというと、プラモが好きでガンダムが好きになった様な感じです。
それに、ロボットを初めて“兵器”として扱った描写が斬新で、益々のめり込んでいった訳です。
当時、すでにHJを買っていた悪ガキは、MSVのイラストを見てかなり衝撃を受けた訳です。本編より兵器としての描写が明確で、普通のアニメとは違う奥行きにカッコよさを感じた訳です。それが、HJ誌面でも最初の内はリアルタイプガンダムとか、迷彩塗装した物とかが発表され、それだけでもカッコよかったのに、徐々に06R、ザクキャノン、プロトタイプドム等立体化され、そりゃあ刺激受けまくりでした。だから、TV本編に出てきた物より、MSVの方をよく作っていたと思います。本編の物は、ザク、グフ、ゲルググ、ドム、ズゴック、アッガイ、ゴッグくらいしか覚えてないです。(笑)徐々にMSVシリーズのプラモが発売されていき、結構作り倒してたと思います。

その後、ダグラム、ボトムズとはまって行き、リアル系ロボット万歳の状態でした。
当時、ガンプラを作っていた大先輩モデラー諸氏は元々スケールモデラーの方が大半で、自分もそんなモデラーさんに憧れ、リアル系アニメロボットを“リアルにカッコよく作るにはスケールモデルのノウハウが必要!”と思い、まじめにAFV等も手を出す様になり、今に至る訳です。

今回、自分自身かなり影響を受けたMSVの企画に参加させて頂けたという事は非常に感慨深いものであり、また、何かこの作例より感じて頂ける物があればと思いながら製作させて頂きました。

さて、今回のコンセプトですが、大河原氏の作画の雰囲気を現代風に解釈、また、かつてMSVが展開された大本のコンセプト、MSを兵器としてのリアリズムを元に現用戦車をモチーフにディテール等も盛込む方向性で製作です。自分なりに“MSV IN 21th century”という感じでしょうか。また、いつもAFVテイストMSの作例をする際の“もし、このMSが本当に存在したら、この様な形ではないか?”と言う様な事も盛込んでいます。

また、完成品画像は作例が戻り次第アップします。


 

今回参考にさせて頂いたデザートチャレンジャーとはこんな戦車です。
イギリスのMBTで湾岸戦争で大活躍でした。
火力、防御力共に高水準でFAガンダムのイメージにピッタリです。

こちらは塗装寸前の状態です。幾つか付けていないパーツはありますが…ガンダムver.1,5を基本としつつ、原画のイメージである“意外にスリムなFAガンダム”を目指しています。

MSVキットの使用はあまり無いのですが、前腕、肩増加装甲、武器、つま先、バックパックはキット形状を基本的に残しつつ製作してます。胴、腰、スネ、足首等の増加装甲部は基本的にエポパテを貼り付け、硬化後剥がして形を整えています。
MSVキットだと、1,5にかなり合わないと言う判断と、スリムなFAガンダムを目指した為です。
スネに関しては、1,5のスネカバーパーツを取り付けずにFAのパーツを付けるという方法もありましたが、当初アーマー着脱可能で製作していたので、結果的にエポパテでの製作になりました。
裏話ですが、この作例製作の為にタミヤ速乾エポパテを3本使ってます…(笑)

今回の作例ではエポパテ、ポリパテ、ラッカーパテ、プラ板、エッチングパーツ、金属素材とフル動員で製作となりましたねー。これでキャストとファンドも使ってたら…あ、手首がBクラブのマニュピレーターだからキャストは使ってる!(爆)
頭部はフェイス部の後ハメ加工、筋彫りのし直し、アンテナをシャープに削り込み、予備アンテナをタミヤのドイツ軍小火器セットを元にでっち上げです。細いアンテナはギターの弦を使用。
センサー部はエッチングパーツの流用と、プラ棒、ウエーブのパーツから製作。
本来もう少し密度感を持たせた方がイイ部分ではありますが、比較的あっさり目にまとめてしまい、少々反省。
全体的にはあっさり目にまとめたつもりだったので、バランス的には丁度いいかも?
胴体の増加装甲はなるべく“垂れ乳”にならない様に造形してます。HJ誌製作文の様に、ブロックごとに造形しています。肩から胸へ掛けての平面、肩に乗っかってるブロック、コクピットブロック、胸のメッシュ、腹部両サイドと言った感じの分け方で、パテが硬化したら整形、またそこにパテを盛って整形を繰り返してます。胸のメッシュはハセガワのエッチング、ハッチ、リアクティブアーマーは現用戦車のデザートチャレンジャーを参考にプラ板で製作。ハッチ脇の溶接ラインは瞬着をカッターの刃ですくって付けています。ハッチ下のパネルはガンプラのマーキングシールの印刷をペーパーで消してちょうどイイ大きさに切って貼ってます。
シールドはキット形状まんまで、リアクティブアーマーをプラ板の細切りで作っています。裏にはプラ板を貼りディテールを追加。2連ビームライフルは砲口部に真鍮パイプの淵を薄くした物を差し込んでます。ライフルホルダーはエポパテで製作後、エッチング、プラ材等でディテールアップ。グリップはキット形状を整え延ばしランナー、エッチング等でディテールアップ。前腕増加装甲はキットの物を幅つめして使用。溶接ラインはタミヤの流し込み接着剤でエッジを撫でて若干溶かし、ケガキ針の腹でチマチマと表現。リベット打ちもケガキ針でつついてます。
前腕装甲部は上記と同じ。シールド部は2oプラ板を貼り、プラ棒“エバーグリーンのクォーターサークルロッドの細い物”にて跳弾板風のディテールにしています。シールド淵は溶接ラインを付け、プラペーパーで段を付けています。手首はBクラブのハイディテールマニュピレーターを使用。
胸部の次に手間の掛かっている脚部。スネの部分はデザイン的に若干変更をしています。MG1,5をベースにしている事もありますが、多少今風のラインを取り入れた方が“リスペクト フォー MSV”と言うコンセプトにふさわしいのでは?との思いからです。

実際の膝周り、ふくらはぎ部分は元のガンダムのラインとちょっと違う形になってますが、増加装甲と言う物はなるべく“軽く”する事が現用兵器では課題となるものです。ですから、中空“スペースドアーマー”、ショット装甲等が多く使われていたりする物です。
と言う事で、なるべく本体スネの形状にフィットする形としています。まず、スネ前面下部にメンタムを塗ってエポパテを盛り整形。その次にヒザにパテを盛って再び整形。硬化後、ヒザ下バーニア部分を一度くり貫いて、コトブキヤのパーツを加工した物を埋め込んでパテを盛り整形。次にスネ裏下部にパテを盛り整形し、ふくらはぎ裏も同様。ふくらはぎ両サイドを前記と同様に工作後、バーニアユニットも同様にエポパテで製作。エポパテが多少柔らかい状態で剥がすので若干面に歪みが生じます。そこをポリパテで平面、曲面をしっかりと出します。足首も同様に前後で分ける様に製作しています。

一通りパーツが仕上がったら一度グンゼのサフ1000番を吹いておきます。その後、プラ板等で製作したディテールパーツ等を接着していく訳ですが、ここで豆知識。一度サフでコートをしたパーツはプラを接着する場合、スチロール系の接着剤でちゃんと接着出来ます。瞬着だと微調整が難しかったり、エポキシ接着剤だと接着剤の厚みが気になる場合に非常に有効な手段です。今回、エポパテで製作した部分にプラを接着する場合はほとんどタミヤの流し込み用を使用しています。
追加のアンテナと言えば、MSV当時、ディテールアップの一つとして盛んに行われた追加工作です。私は当時それだけでもすごくカッコよく思えていたので、伸ばしランナーを使って良く付けていたのを思い出して付けてみました。基部には当時流用パーツ(その時代にはウエーブやコトブキヤのオプションパーツ等は存在しなかったのです。(笑))の王道だったタミヤのドイツ軍小火器セット(もちろん現在も現行品です)をメモリアルとして(笑)付けています。現在ではバレバレだからか、あまり知られていないのか、小火器セットを流用パーツで使用した作品をほとんど見かけなくなってしまいましたねー。
見せ場の一つでもあるロケット砲。この様に“武器然り”とした形の部分は現用兵器を参考にし易い部分です。ならばという事で、現用の火砲等を参考にディテールアップします。ディテールアップの際、可動軸等の部分はある程度機能性を考えたディテール表現を取り入れていきます。基本的にエッチング、小火器セット、プラ板、伸ばしランナー、その他ジャンク等でそれっぽい感じでMSV当時で言う“でっち上げ”をして行く訳です。旧キットのパーツは比較的あっさりしていて、どこをどうディテールアップすればまとまり易いか…個人的なコツとしては“メリハリを付ける、各面の淵に気を使う”です。細かいディテールを入れる部分はそこに集中させたり、そうでない所はあっさりと…あっさりした部分があるから細かいディテールが映えるという訳です。
バックパック全景。基本的には上記と同じです。バックパック上面に昔ダグラム等でバックパックの上面にあったロールバー(吊り下げ用?)をつけてみました。上記のコツの続きですが、各面の淵にどの様に気を使うかというと、“この構造物はどの様な材料で、どの様な工程で作られたかを想像”を想像してみます。その上で一番合理的そうな工法を考え、それに必要なディテールを追加していく訳です。例えば、バックパックなら前面ほど厚い装甲は必要ないはずなので、薄い板が使用されていて、被弾率も低いであろうからリベットの様な簡単な設備で組んでも問題はないであろう…薄い板なら正面の装甲よりはリベットは少なくて済む…という具合に想像を膨らませる訳です。

塗装に関しては今回普段はあまりやらない事も盛込んでみました。

サフ吹き前に昔ガンプラの王道で施されていた“梨地表現”をしています。梨地といっても、1/35AFVに施す様に溶きパテを塗るという様にやってしまうと、明らかにオーバースケールになってしまいます。かといって、フラットベースを吹いた様な梨地だとマットなのか梨地なのかが解り辛いです。で、今回は多少のオーバースケールを覚悟の上で、多少大袈裟にしています。まず、タミヤスーパーサフをシンナーの空ビンに空けて、ブラシで吹く時より濃い目に希釈します。それをコンプレッサーの圧力を弱くして(コンプを持ってない方はエア缶接続用のジョイントをゆるめて圧力を弱く出来ます。安定性はあまりありませんが…)“遠くから(50pほど離して)”吹いてやります。結構ザラつきがイイ感じで付いてくれます。基本的に増加装甲部分のみに限って梨地を施しております。

その後、グンゼの1000番サフで梨地以外のパーツを吹いていきます。この場合は、増加装甲部が梨地、武器、ガンダム本体を1000番サフで吹いています。この様に質感を変えてやる事で素材感、構造材の違いを表現する事も模型に変化と奥行きを持たせる事が出来る方法の一つです。ツヤのコントロールだけでも素材感、質感はかなり変わってきますからお勧めです。実際の物を観察して、そのツヤの感じ、色の感じを掴んで模型に反映させるとグッと実感が出てきます。ただのプラスチックを金属、布、石、人肌に化けさせる事が出来る塗装というのは模型製作の醍醐味の一つとも言えるでしょう。半光沢、グロス、マットを一本調子で塗るだけでは味わえない物だと思います。

今回のチャレンジその2は下色にマホガニーを塗っているのですが、時間短縮の意味もあり缶スプレーで下色を吹いてます。今まで缶スプレーは微妙なコントロールが難しいのと、塗膜が厚くなってしまうのでは?という思いから苦手意識がありました。しかし、コツさえ掴めば特に問題なく出来る事が解りました。お陰で大幅に時間短縮が出来て、塗膜も厚くならずにいけました。ともかく至近距離で、すばやく“シュッ!”と吹いてやる事が失敗の少ないやりかたです。

次に基本塗装をラッカー系塗料で施します。ダークグリーンは自衛隊用カラーセットのダークグリーン、明るいグレーは明灰白色に原色のブルーを少量、濃いグレーはエンジングレー、オレンジは原色のオレンジ、などです。いつもの様にエッジに下地のマホガニーを少し残しながらグラデーションをかけていきます。ダークグリーンはドライブラシを前提にしていたので、多少暗めの色をチョイスしてます。逆に明るいグレー部分は暗い所とのコントラストを付ける為に極力明るめに、また、黄色みが出ない様にブルーを入れてます。多少青みが入ってる方が、重金属地に白っぽいグレーを塗った雰囲気が出るからなんです。オレンジは、グレーやらダークグリーンという配色の中でアクセントとして目立つ色にしたかった事もあり、原色のオレンジをそのまま塗ってます。

その後、スミ入れをフラットブラックで施し、MSVのキットに付属のデカールにてマーキングの後、第一段階のウオッシングをフラットブラウンで行っております。
ダークグリーンがかなり暗い色なのでスミ入れは思い切って黒です。
ここでのウオッシングは全体のトーンを整える目的と、使用感の演出の目的で行ってます。明るい色、暗い色、鮮やかな色が混在する時にそれぞれの色が変に際立ってしまう事がありますから、それらをある程度なじませるという意味合いが強いです。

十分乾かしたら白、黒、イエローグリーンでチッピングをして、エナメルシンナーで第二段階のウオッシングをします。
こちらのウオッシングはウェザリングの意味合いが強いです。
どの様な環境の状況下、どの様な汚れが付くかを想定してその色をチョンチョンとドット状に筆先で付けていきます。陸戦兵器として考えた時、擦れ、黒ずみ、水垢、泥汚れ等が想定されますので、擦れ、黒ずみは黒、水垢は白、泥汚れはイエローグリーンという様な感じです。ですから、使用環境の状況下により、選択する色も変わってきます。それらをわざとらしくない程度にエナメルシンナーでぼかし、自然さを演出します。

その後、MSVにはドライブラシがお約束との事で、自分的にはきつめにドライブラシを施しています。
ダークグリーンベースに白を3段階程に分けて徐々に明るくして、最後のドライブラシはかなり白に近い色でかけています。
この場合のドライブラシは、梨地、溶接痕、その他ディテールの強調的に“光の演出”として行っています。ですから、あまりドライブラシが目立ち過ぎてもNG、エッジに乗ったドライブラシの色のラインが必要以上に太くなってもスケール感を損なうのでNGな訳です。光はいくら模型の腕を上げても1/100にする事が出来ない為、光を模型に書き込むという感覚で行ってます。本来なら、細筆で描いてやった方が光らしく見えると思うのですが、やはりそこはMSVという事で、当時の風合いを尊重している事もあるので、あえてドライブラシを行ってみました。ですから、この場合の筆は毛足の柔らかい平筆を使用してます。

次はMSVには必須とも言える?剥げチョロを施します。
MSV当時はドライブラシや磨き出し(下地に金属色を塗ってその上から本体色を塗り、その後磨いて金属色を露出させる技法)等で銀色を剥げチョロの色にする事が多かったのですが、現在ではあまり“銀剥げ”をやる方は居ないようです。実在する物と比べてあまりリアルでない感じがするからだと思いますが、私も銀剥げはやらないですねー。で、今回はいつもの私の剥げチョロを少しだけ変えてやっています。単純に黒に銀を極少量混ぜただけなんですが…今回の様に暗い色がベースだといつものジャーマングレーだと明るさの落差があまり無いのでほとんど目立たなくなってしまいます。本来なら本体色を明るくすれば解決する事なんですが…で、今回は黒に銀を少量混ぜる事にした訳です。そして、剥げチョロは細筆で丁寧に書き込んで行く訳です。先ずはエッジの部分に筆で乗せて行き、面に描いてある細かい点の剥げチョロは特製筆にて付けています。特製筆は自作の物なんですが、ライターの大先輩である初沢さんに“ねぇ〜、特製筆ってどんなの?”とリクエストを受けたので、ここで公開です。

 こんな感じの筆先です。実際に細筆の先を何本か毛を残して切って、広げただけの物です。(笑)

最後に少々パステルでお化粧と、バーニアの辺りをウェザリングカラーのスートでスス汚れをして仕上げます。
今回はあえて“サビ表現をしない”フィニッシュに挑戦してみました。サビ表現というのは色彩的にも見栄え的にも実感的にも解り易く、非常に有効な手段だと思うのですが、実在の兵器でサビが浮いている写真をあまり見かけないですし、“未来的兵器”にサビというのもちょっと考え辛い部分もあり、そこはあえて現代風という事を考え、サビ表現は控えてみましたが、いかがでしょうか?もちろん、自分自身はサビ表現等は大好きですので、今後の作例で施す可能性は十分あるのですが、21世紀のMSVという事で今回は多少進化した考え方を下に控えた次第です。

それは、リューターによるダメージ表現も然りで、個人的にもう少し研究してから答えを出して行きたいと思います。
ですから、私の中でMSVは過去の物でもありますが、もう一つの進化しているMSVも存在しています。
また、何らかの形で研究成果を発表出来ればと思います。



さて、長々と駄文にお付き合い頂きありがとうございました。
今回はHJ誌の早売りがかなり進んでいたようで、いろんな方から“HJみたよ!”というご連絡が多々あって、すごく嬉しかったです。
MSVという自分の原点の一つという題材を下さった編集担当氏、相談に乗って頂いた小松原博之氏に多大な感謝の意を表します。

先にも書きましたが、このMSVという物は過去のノスタルジーという物も持っていますが、今だに進化の過程であると個人的には思うのです。
機械、電子工学も20年以上前とは比べ物にならない位進化した訳ですから、新たな概念というものが反映されたMSVという物もこれからは必要になっていくでしょうし、模型的表現としても同じ事が言えるのでは?と思います。
ですから、メーカーさん側にも新たな模型表現を加味したMSVキット開発という物が必要になってくる時期がいずれは来るのではないかと考えます。
ザブングルのキットに繊細なディテールが施されていた時の様に…

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